「患者さんに舐められている気がする」
そう感じて、自分の話し方が悪いのかな、と考えたことがある人は多いと思います。
声のトーンなのか、言葉選びなのか、距離の取り方なのか。
何かを変えないといけない気がして、でも何がズレているのかはよく分からない。
丁寧に説明している。
傾聴も意識している。
線引きも守っている。
それでも、なぜか会話が広がらない。
手応えが残らない。
この違和感って、本当に「話し方」の問題なんでしょうか。
もちろん、現実的な話をすると、
声が極端に小さかったり、なよなよして自信がなさそうに見える話し方は、
患者さんからすると
「この薬剤師、大丈夫かな?」
という不要な疑問を持たせてしまいやすい。
そういう意味で、
最低限の聞き取りやすさや、落ち着いた話し方に整えることは、
改善したほうがいいのは言うまでもありません。
ただ、それを整えた“その先”で残る違和感について、
少し立ち止まって考えてみたいと思います。
現場で起きているのは、
上下関係とか、強い弱いの話というより、
患者さんとの距離の取り方が、どこかで噛み合っていない
というズレなんじゃないか、という感覚です。
この記事では、「舐められない話し方」を教えたいわけではありません。
そうではなくて、
会話の中で、
どこまで相手の考えを引き受けて、
どこで自分の判断として返しているのか。
その距離設計が、どこでズレやすいのかを整理してみます。
「舐められている気がする」と感じたときの自己点検チェック
これは話し方のテクニック集ではありません。
自分が今、どんな距離で会話をしているかを点検するためのリストです。
① いつもの説明を、最初から最後までしていないか
薬効や用法を一通り説明すること自体は、もちろん間違っていません。
ただ、相手がすでに分かっている領域に留まり続けると、
会話に入り込む余地がなくなってしまいます。
「この人と話しても、話題が広がらないな」
そう感じさせてしまうと、距離は一気に開きます。
② 傾聴や共感が、「うなずき」で止まっていないか
傾聴って、
ただ黙って聞くことでも、
「そうですよね」で終わることでもないと思っています。
相手の話を一度こちらで言語化して、
「つまり、こういうことですよね」と返す。
この一手が入らないと、
話は感情の吐き出しで止まってしまって、立体的になりません。
③ 「それは医師に聞いてください」で思考を止めていないか
判断できないことがあるのは、当たり前です。
薬剤師として線引きが必要な場面も、確実にあります。
ただ、患者さんが聞いているのは、
最終判断ではなくて、
あなたはプロとしてどう捉えているのか
という部分だったりもします。
線引きだけを返すと、
会話はそこで終わってしまうことがあります。
④ 相手を「考える側」に戻せているか
説明して終わり。
共感して終わり。
ではなくて、
「あなたはどう思いますか?」と
一度ボールを返せているか。
会話が立体的になるのは、
相手がもう一度考え始めたときです。
⑤ すべてを立体化しようとしていないか
毎回深く踏み込む必要はありません。
今日は浅く終わらせる。
今日は線を引く。
今日は切る。
その判断も含めて、距離設計です。
モンスタークレーマーは、別問題として切り分ける
ここは切り分けたほうがいいと思っています。
誰が対応しても、
どう話しても、
対話が成立しない人は、一定数います。
それは話し方の問題でも、
距離設計の問題でもありません。
むしろ、
「今日はここまでにする」
「これ以上は踏み込まない」
と判断すること自体が、
現場では健全な場合も多い。
距離を
・詰める
・保つ
・切る
この三つを使い分けている時点で、
「舐められる/舐められない」という土俵からは、
もう降りている気がします。
距離設計という考え方
「舐められる」という感覚は、
相手の態度そのものより、
自分がどこまで引き受けて、どこで引き取ったか
そのズレから生まれることが多いように感じます。
分かっていることを繰り返さない。
相手の考えを一度受け取る。
その上で、自分の見解を返す。
この往復があると、
関係は上下ではなく、
思考のやり取りになります。
強く出る必要もないし、
下に出る必要もない。
相手を「考える側」に戻す。
それだけで、会話の空気は変わります。
もし「舐められている気がする」という違和感が出たときは、
話し方を責める前に、
距離の取り方を一度点検してみてもいいのかもしれません。
ちなみに、患者さんからの初手「いくら?」の後の会話に薬剤師力試されていると思います。
